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相続人が複数いる場合、金銭債務はどのように相続されるの?

金銭債務は法定相続分に従って分割承継されます

 相続人は、相続開始の時から、故人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。すなわち、相続人は、相続を放棄しない限り、プラス財産(権利)を承継する一方、マイナス財産(義務)も引き継ぐことになります。
 そして、相続人が複数いる場合、各相続人は、その相続分に応じて故人の権利義務を承継することとなります(民法899条)。
 そのため、金銭債務のような可分債務は、法定相続分に従って当然に分割承継されます(大判昭和5年12月4日 民集9巻12号1118頁)。
 具体的には、故人が2000万円の債務を遺して亡くなり、相続人が妻と子供2人(長男・次男)であった場合、各相続人の法定相続分は、妻:長男:次男=1/2:1/4:1/4となり、それぞれの相続債務は妻:長男:次男=1000万円:500万円:500万円となります。
(※)単純にマイナス財産しかない場合は相続放棄をすればいいのですが、プラス財産がマイナス財産を上回る場合(上記の例でいうとプラス財産が2000万円以上ある場合)、遺産分割とあわせてマイナス財産の負担を考慮する必要があります。

 

「金銭債務を特定の相続人に相続させる」旨の遺言をしても、相続債権者には対抗できません

 故人が、「特定の相続人に法定相続分を上回る財産を相続させる」としつつ、「金銭債務についても当該相続人に相続させる」旨の遺言を遺すことがあります。故人の意思としては、「法定相続分よりも多めに財産を相続した相続人は、他の相続人よりも多めに相続債務を弁済するように」との配慮と思われます。
 しかし、「金銭債務を特定の相続人に相続させる」旨の遺言は、相続債権者(=故人の債権者)に対して常に主張できるわけではありません。なぜなら、「優良資産は長男に相続させる」「金銭債務については(資力の乏しい)次男に相続させる」などの遺言がなされた場合、相続債権者を一方的に害する恐れがあるからです。
 そこで、相続債権者としては、このような遺言を承諾して特定の相続人にのみ全額請求することも、法定相続分に従って各相続人に請求することも、どちらも選びうることとなります

 

「特定の相続人が金銭債務を相続する」旨の遺産分割協議も、相続債権者に対抗できません

 共同相続人間で、「特定の相続人が、故人の金銭債務を全て相続する」旨の遺産分割協議がなされることがありますが、この場合も、遺産分割協議の内容(=特定の相続人が故人の金銭債務をすべて引き継ぐ)を相続債権者(=故人の債権者)に対して主張できるわけではありません。なぜなら、仮に「資力の乏しい相続人が故人の金銭債務を相続する」と合意された場合、相続債権者を一方的に害する恐れがあるからです。
 そのため、このような合意はあくまで共同相続人間の免責的債務引き受けにとどまり、相続債権者としては、合意内容を承諾して特定の相続人に全額の支払いを請求することも、各相続人に法定相続分に応じた支払いを求めることも、どちらも選択することができます

 

参照記事

 遺言書に関する疑問は「遺言書Q&A」をご覧ください。
 相続に関する疑問は「相続Q&A」をご覧ください。

 

 

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