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相続人が複数いる場合、賃料債権はどのように扱われるの?

相続開始後に生じた賃料債権について、各相続人は、それぞれの相続分に従って確定的に取得します

 故人が不動産を賃貸していた場合、すなわち相続財産の中に賃貸物件が含まれる場合、故人が亡くなった後も、その不動産は賃料という収益を生むこととなります。
 そのため、相続人が複数存在する場合、相続開始後に生じた賃料債権(=故人が亡くなった後に支払われる賃料を請求する権利)の帰属が問題となります。
 そもそも、相続人が複数いる場合、賃貸物件を含め相続財産は、相続開始から遺産分割までの間、相続人の共有に属するものであり(民法898条)、この間に相続財産を使用管理した結果生ずる賃料債権は、相続財産とは別個の財産と解されます。
 そして、賃料債権は可分債権であるため、各相続人は、賃料債権を、相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解されます(最判平成17年9月8日 民集59巻7号1931頁)。
 そのため、相続財産のなかに毎月10万円の賃料収入を得られる賃貸物件があった場合、相続人である長男と次男(法定相続分はそれぞれ2分の1)は、遺産分割前であっても、当該賃料収入のうち毎月5万円ずつ受け取ることができます

 

遺産分割により賃貸物件の帰属が決まっても、各相続人が取得した賃料債権は影響をうけません

 遺産分割により賃貸物件の帰属が決まった場合、相続開始から遺産分割に至るまでに生じた賃料は、賃貸物件を取得した相続人に帰属することになるのでしょうか。
 確かに、遺産分割の効果は遡及する(民法909条本文)とされていますが、賃料債権は相続財産と別個の財産であり、各相続人が相続分に応じて確定的に取得するものであるため、賃料債権の帰属は、のちになされた遺産分割の影響を受けないものと解されています(最判平成17年9月8日 民集59巻7号1931頁)。
 そのため、遺産分割の結果、相続開始から6か月後に賃貸物件を長男が取得することが決まっても、それまでの間、次男が受け取った賃料について、何ら影響を受けることはありません。長男は、次男に対して、6か月分の賃料の返還を求めることはできず、賃料を全額受け取ることができるのは、遺産分割後の賃料からということになります。

 

相続人全員の合意があれば、遺産分割の対象にすることもできると考えられています

 相続開始から遺産分割までに生じた賃料債権は、各共同相続人が、相続分に応じて、分割単独債権として確定的に取得するため、相続財産に含まれず、遺産分割の対象とならないのが原則です。
 しかし、紛争の一回的処理の要請や可分債権による調整機能を考慮すると、相続開始後に生じた賃料債権も、遺産分割の対象とした方が相続人間の公平に適い合理的というケースも考えられます。
 そこで、相続開始後に生じた賃料債権も、相続人全員の合意がある場合には、遺産分割の対象にできると考えられています(大阪高裁判決平成元年9月27日 判タ718号196頁)。
 そのため、相続人全員の合意があれば、長男が賃貸物件を取得する代わりに、相続開始から遺産分割までの間に長男が取得したはずの賃料債権を次男が取得する、という内容の遺産分割も可能となります

 

参照記事

 遺言書に関する疑問は「遺言書Q&A」をご覧ください。
 相続に関する疑問は「相続Q&A」をご覧ください。

 

 

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