相続財産の管理費用は、誰が負担するの?
各相続人が相続分に応じて負担したものと同じ結論になります
相続開始から遺産分割までの間、一定の時間を要するため、その間に相続財産の管理費用が生じることがあります。相続人が複数いる場合、その管理費用の負担が問題となります。
考え方としては、相続財産の管理費用を、①「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する」と定める民法885条1項本文の「相続財産に関する費用」と含めてとらえる考え方と、②相続財産が共有状態にある(民法898条)ことから、共有物の管理費用(民法253条1項)と捉える考え方の2通りがあります。
しかし、最終的な結論として、ほとんど差異はありません。
相続人間の合意があれば、遺産分割手続きの中で管理費用の清算もできます
上記の考え方の違いが問題になるのは、相続人の中の誰かが管理費用を立て替えた場合に、遺産分割手続きの中でその清算を行うことができるか、という点です。
①相続財産に関する費用と捉える考え方によれば、相続財産の中から支弁されるため、遺産分割手続きの中で清算することになります。
他方、②共有物の管理費用と捉える考え方は、相続財産の管理費用は、相続開始後に生じたものであり、相続財産とは別個のものであると捉えており、管理費用の清算は、遺産分割手続きとは別個の民事訴訟によるべきと考えます。
家庭裁判所の実務においては、相続財産の管理費用は、遺産分割手続きの対象とならず、民事訴訟手続きで解決することを原則としつつ、相続人間の合意があれば遺産分割手続きの中で清算することも可能とされています。
相続財産の管理費用の例
相続財産の管理費用の例としては、以下のものが挙げられています。
・土地・建物の固定資産税
・賃借料
・電気料金
・水道料金
・火災保険料
・下水道使用料
・土地改良費
・山林の植込み・補植・下刈等の管理維持費用
・増資払込金等株式取得費用
・新株払込金
・清算のための売却についての譲渡所得税
・遺産を換価する場合の諸経費(不動産仲介手数料、株式売却手数料)
・修繕費
・遺産の賃借人に対する立退き料
・賃料の取立費用
参照記事
遺言書に関する疑問は「遺言書Q&A」をご覧ください。
相続に関する疑問は「相続Q&A」をご覧ください。
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