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遺産分割協議

 遺産分割協議とは、相続が開始した(=故人が亡くなった)ものの、遺言書が存在しない、または、遺言書に相続財産の分け方に関する記載がないために、相続人全員で相続財産の分け方を決める話し合いのことをいいます。
 遺産分割協議は必ず相続人全員で行わなければなりません。ただし、相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされるため、遺産分割協議に参加する必要はありません。
 相続人のうち1人でも協議に参加していないものがいる場合、原則としてその遺産分割協議は無効となりますので、慎重に相続人の調査を行ってください。

遺産分割自由の原則

 法定相続人には法定相続分が定められていますが、遺産分割の当事者全員の合意があれば、法定相続分と異なる割合での遺産分割も可能です。
 また、遺言書がある場合は遺言の内容に沿った遺産分割が行われるのが原則ですが、この場合も遺産分割当事者全員の合意があれば遺言書の内容と異なる分割を行うことが可能となります。

遺産分割の基準

 法律は遺産分割の基準として次のように定めています。

民法906条(遺産の分割の基準)
 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

 このうち、「年齢」としては年少者等への配慮、「心身の状態」としては心身障がい者などへの配慮、「生活の状況」としては今まで居住してきた住居の確保への配慮を行う趣旨といわれています。
 ただし、「その他一切の事情」としてあらゆる事情を持ち出すことができるため、相続人が自らの主張を譲らず紛争状態(いわゆる争族)に陥ることも少なくありません。また、この条文は、各相続人の法定相続分を前提に、個々の相続財産の帰属を定めるうえで考慮すべき事情を定めたものであり、この条文を根拠に法定相続分を変更することまで許した規定ではない(=民法906条を根拠として法定相続分を変更することはできない)といわれています(東京高決昭和42年1月11日家月19-6-55)。
 ただし、法定相続分を修正する要素として、「寄与分」と「特別受益」という制度が認められています。

遺産分割協議書の作成

 成立した遺産分割協議にもとづき名義変更など具体的な相続手続を行う場合、遺産分割協議書が必要になります。そのため、遺産分割協議が成立すれば、遺産分割協議書を作成してください。
 遺産分割協議書を作成するうえで、誰が、何を、どのように(取得)するかを明確にする必要があります。
 そのうえで、相続人数分の通数の遺産分割協議書を作成し、各協議書に相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。
 ※遺産分割協議書の作成は専門家に依頼することをお勧めします。

寄与分

 たとえば故人が家業を行っており、長男が家業の発展に多大な貢献を行ったとします。いわば長男の貢献によって、故人の相続財産は増えたわけですが、これをそのまま法定相続分で分割してしまうと、家業の発展に貢献した長男とそうでない次男その他の相続人との間で不公平になりかねません。
 そこで、法は、相続財産の維持・増加に特別な寄与を果たした相続人に対して、相続財産のうち当該相続人の寄与によって維持/増加した部分について、優先的に割り振る制度を設けています。これを「寄与分」といいます。

【寄与分がある場合の計算方法】
・「みなし相続財産」=「実際の相続財産」-「寄与分」
・寄与分のある相続人の相続分=「みなし相続財産」×法定相続分+「寄与分」
・寄与分のない相続人の相続分=「みなし相続財産」×法定相続分

≪具体例≫
 家業を行っていた故人が8000万円の相続財産を遺して亡くなる。相続人は、長男、次男、三男の3名であり、このうち家業を手伝っていた長男に2000万円の寄与分が認められる。法定相続分は、長男、次男、三男で各3分の1。
 「みなし相続財産」=8000万円-2000万円=6000万円
 長男の相続分=6000万円×1/3+2000万円=4000万円
 次男の相続分=6000万円×1/3=2000万円
 三男の相続分=6000万円×1/3=2000万円

寄与分の認められる要件

 このように寄与分は相続人間の公平に配慮した制度ですが、これが認められるためには以下の要件を満たす必要があります。

【寄与分の認められる要件】
①「相続人」による寄与であること
②「特別の寄与」であること
③相続財産の「維持」または「増加」と因果関係のあること

 まず、寄与した者は「相続人」である必要があります。たとえば、長男の奥様がどれだけ故人の家業へ貢献されたとしても、長男の奥様は「相続人」ではありませんので、寄与分が認められることはありません。
 次に、「特別の寄与」である必要があります。たとえば、家業の発展は妻の内助の功によるところが大きかったとしても、これが夫婦の協力義務に基づく一般的な寄与の程度をこえるものでないと認められた場合は、「特別の寄与」にあたらず寄与分は認められません。
 また、相続財産の「維持」または「増加」と因果関係が認められる必要があります。たとえば、長男がフルタイムで家業に貢献し、家業も発展したとしても、家業の発展が外部的要因など、長男の寄与と無関係なものによると認められる場合には、長男に寄与分が認められることはありません。

特別受益

 「寄与分」が相続財産の維持・増加に貢献した相続人とそうでない相続人間の公平を図る制度であるのに対して、相続財産から受益を受けた相続人とそうでない相続人間の公平を図る制度として「特別受益」があります。
 これは、相続人の中に、生前の故人から生活資金などの贈与(=特別受益)を受けていた者がいるときは、相続分の算定にあたってその分を差し引く(=持ち戻し)という制度です。

【特別受益がある場合の計算方法】
・「みなし相続財産」=「実際の相続財産」+「特別受益」
・特別受益を受けた相続人の相続分=「みなし相続財産」×法定相続分-「特別受益」
・特別受益を受けていない相続人の相続分=「みなし相続財産」×法定相続分

≪具体例≫
 故人が5000万円の相続財産を遺して亡くなる。相続人は長男、次男、三男の3人であるが、長男は生前の故人から1000万円の生活支援を受けており、これが「特別受益」にあたると認められる。法定相続分は、長男、次男、三男で各3分の1。
 「みなし相続財産」=5000万円+1000万円=6000万円
 長男の相続分=6000万円×1/3-1000万円=1000万円
 次男の相続分=6000万円×1/3=2000万円
 三男の相続分=6000万円×1/3=2000万円

未成年者/認知症/行方不明者

 遺産分割協議を行うに当たって、未成年者や認知症の方、行方不明者が存在する場合、特別な手続きが必要となります。

未成年者がいる場合

 相続人の中に未成年者がいる場合、親権者が代理人となって遺産分割協議に参加するのが原則です。しかし、たとえば父親が亡くなり、妻(母親)と未成年の子供が相続人となる場合、子と母(親権者)の立場は遺産分割協議を巡り利益が相反する関係(=母の相続分を増やすと子の相続分が減り、子の相続分を増やすと母の相続分が減る関係)となり、母が親権者として子の立場を代理してしまうと子の相続分を不当に侵害する恐れがあります。
 そこで、このような場合は未成年者のために特別代理人を選任し、専任された特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に臨むこととなります。

認知症の方がいる場合

 相続人の中に、認知症などで事理を弁識する能力を欠く状況にある方がいらっしゃる場合、その方の参加した遺産分割協議は取り消される恐れがあり法律的な安定性を損なってしまいます。そこで、本人に代わって遺産分割協議に参加してくれる者(=成年後見人)がいない場合、成年後見人を選任するために、遺産分割協議に先立ち、家庭裁判所へ成年後見人の選任の申立を行う必要があります。
 既に成年後見人が選任されている場合、成年後見人が認知症の方(相続人)に代わって遺産分割協議に参加するのが原則です。ただし、成年後見人自身も相続人であるということもあります(例:父親が亡くなり、相続人が妻(母親)と息子の2人であったが、妻(母親)が認知症であったため息子が成年後見人に選任されていた場合)。
 この場合、成年後見監督人が選任されている場合は成年後見監督人が認知症の方(相続人)に代わって遺産分割協議に参加します。
 他方、成年後見監督人が選任されていない場合、未成年者の場合と同様に、認知症の方(相続人)のために特別代理人を選任し、選任された特別代理人が認知症の方(相続人)に代わって遺産分割協議に参加します。

行方不明者がいる場合

 相続人のなかに行方不明の方がいる場合、①不在者財産管理人を選任する必要があります。そのうえで、選任された不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するために、②権限外行為許可の申立を行う必要があります。
 これらの手続きを経たのち、不在者財産管理人が行方不明者に代わって、遺産分割協議に参加します。

遺産分割協議がまとまらない場合

 遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。そのため、1人でも合意しないものがいる場合、協議が成立しません。
 このような場合、管轄の家庭裁判所で遺産分割調停を行い、それでもまとまらない場合は遺産分割審判を申し立てることになります。
 遺産分割調停では、裁判官と調停委員が各当事者から事情を聴取し、必要な資料を提示させ、遺産について鑑定を行うなどして、解決案の提示や助言を行います。
 それでも解決できない場合は、審判手続きが開始され、裁判官が遺産に属する物または権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して判断することになります。

相続税の申告期限に注意

 遺産分割調停は1か月1回程度のペースで期日が開かれます。そのため、短くても半年前後、一般的には1年前後、解決までに時間を要します。
 相続税の申告期限は相続開始後10か月以内であるため、申告期限に注意する必要があります。

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